食い気とまちの色気

翼よ!あれがパリの灯だ。

— チャールズ・リンドバーグ

朝焼け時のパリが好き。ぷわーんと焼きたてのパンとコーヒーが街角のいたるところから香ってくるパリの朝は、人生への原動力を強烈に与えてくれる。1日が始まる喜びを今日も明日も鼻から全身に吸い込む毎日。この街にはそういう官能的な日常の仕掛けがそこら中にあって、我々が根本的には生き物であるという証に気づかせてくれるから、やっぱり何度でも訪れたくなる。

そんな生きることへの刺激を注いでくれるパリ。例えば7区にあるボン・マルシェの食料品売り場は、まるでおとぎ話の中に連れ込まれた主人公の気分にさせてくれる。見た目にも本当に楽しすぎて、くるくるとあっちに行ったりこっちに行ったり。ありとあらゆる食材が美しくディスプレイされ、調理され、そしてその場で飲み込めてしまうこともできるこのデパートは、食するという本能が文化となり、そして芸術表現の域にまで開花したことを人間として祝福したくなる舞台装置のようでした。

パンの山
パンを上に積み重ねるってあまりないかも。

 

スパイシー!
見た目にも楽しいスパイス売り場は官能的。

アートは誰のために

待っていてくれる人に愛を届けるため

— 草間 彌生

久々に良いミュージアムに出会った。入ったというより、そう、出会ったのだ。ニューヨークのようにアートで名をはせる街でもないヨーロッパの中堅都市ここロッテルダムで、普通の市民が普通の週末に子供を連れて行って楽しめる場所としてこのミュージアムが街のはずれに存在する。古い建物と、その増築部分、そしてモダンな中庭に対し、遠くの森にまで広がる伝統的なガーデン。展示も大胆に中世の家具からプロダクト・デザインの現代にまでまたがり、アートやクラフト、学びや遊びという領域を超えてすべてが仲良く収まっている街の宝たちはこの空間からとても人々に愛されていることが手に取れる。さらに壁に飾ってある学芸員の言葉が、とても沁みる。子どものころからこのミュージアムに連れられ、ずっとここに通い詰めていたと。そして大人になってここで街の人のために仕事ができることが何よりも誇りだと。泣けてくる。。近しい人たちからそっと連鎖していく文化の囁きは深く街のリズムに浸透して、美しく透き通るハッピーの音色となって、今日も旅人の耳にあちらこちらから伝わる。

ミュージアム中庭のインスタレーション
ぐるぐる。。
クロークなんてもう、つまらない
ドア付きロッカーから飛び越えたこの発想が凄い。

 

 

都会の森のお話

私の音楽は自然から多くを学んでいる

— 武満 徹

日本の都会に住む私たちは一体、何から日々の学びを得ているのだろう。平らで真っすぐに伸びる道路、朝も夜も律義に働く信号に支配され、まちの動くオブジェクトとして考えを排除させられ前を行く毎日。むわっと襲い掛かる排気ガスや室外機のエアーに取り囲まれながらも、苦痛などこれっぽちも見せずに今日もきめたスーツ姿をビル窓は映し出す。そんな変わりばえのない都会のフォルム、ファサード、ヴォイドは移り去る日々を無情に跳ね返すだけだ。

東京のそんな無味無情から逃げるようにして辿り着いたアムステルダム。カラッと澄んだ空気が潤う秋の公園で朝の散歩をしてみると、自分の生物っぷりが呼び覚まされる。体に染み入る朝霧が本当に気持ち良い。こういう一時が当たり前にあるこのまちに住む人たちは、なんて幸せなんだろう。

自然が織りなす模様はなぜか魅力的。

 

 

 

 

 

見つけ棚?
クリスマスツリーみたいに落とし物を飾る感覚で。