女性をもっともセクシーにするのは自信
―ヴィクトリア・ベッカム
ロンドンは西部地区にあるパディングトン駅。ここはヒースロー空港をはじめ、イギリス西部へ向かう鉄道の玄関口である。この駅はいつも乗降客でごった返していて、駅舎も古く、ロンドンでも昔の旅の臨場感が味わえる場所のひとつとして私は好きだ。駅の中は暗く、気の利いた店もなく、その場末な感じと不愛想さが良いのだ。北の玄関口、キングス・クロス駅は10年もの期間を経て刷新され、見違えるように近代的になったから、まだまだ古き良き趣の残るパディングトン駅は、そこに漂う哀愁が時代物の映画撮影なんかにはとても貴重なのかもしれない。と思いきや駅の裏側に出てみると、わっ、自分の記憶にあった光景は跡形もなく、一気に産業革命頃のロンドンからミレニアムへ超高速タイムワープさせられる。
運河を主役としてまちが整備され、心地よいお散歩コースに変身していたのだ。調べてみるとここは昨今、駅を中心とした再開発が着工し、あの関西国際空港を設計した建築家であるレンゾ・ピアノがデザインする一大プロジェクトとなっているそうだ。そしてまず何よりも真っ先に目に飛び込んできたのは、レストランバーとして改装され運河に停泊するこのカラフルな船!それもそのはず、ポップ・アーチストのピーター・ブレイクによる仕業なんだと。コンクリートとガラスと、スーツに革靴、ちょっとオフィス街の堅苦しさのど真ん中に♡KAWAII♡を埋め込んでしまう大胆さ。このセンスがなんともイギリスなんだなぁ。通勤途中に、散歩途中に、こんなに人の気持ちを華やがせるものは、完全にまちのアートと呼ばせてもらうぜ。
