欲望を伴わぬ勉強は記憶を損ない、記憶したことを保存しない。
-レオナルド・ダ・ヴィンチ
ずっと行きたいと思っていたサルディニア島。地中海への憧れと古代都市に対する敬意を引き連れて念願かなってこの地に来ることができました。ここまで来るとさすがにイタリアというより人も食べ物も中東に近い。気候はベタっとしていて、ワインよりビールが喉には嬉しい。でも街並みはどっぷりイタリアがしみ込んでいて、ミラノやトリノのような上質グランデな道幅や大聖堂、権力で整備された力強いエネルギーは宿っていないけれど、素材や様式、どことなく色っぽいフォルムはやっぱりイタリアだなぁと歩いていて思う。
そしてある週末の朝、まちの中心的ピアッツアに面したカフェでブランチをしながら待ち行く人を観察する。人が街が動いてるところ、ず~っといつまででも見ていられるのは私だけの特技なのだろうか。さてそろそろ自分も街活動に加わらないとと立ち上がり、会計を済ませた後にトイレに向かうために地下へ降りて行くとわっ。そこの壁、天井、飛び出た柱は見るからに遺跡。テーブル席がある改装された上階では見えなかったサルディニアの歴史を感じた。びっくりして店のスタッフに、「ここ遺跡の上に作ったの??」と聞くと「昔は印刷所だったここは」と。「えっ、建てていいんですか?」と驚くわたしに「そんなこと気にしてたらサルディニアでは何も建たないよ」と。古い文化と毎日戯れる暮らしっていいなぁ。看板とか柵とかはなくて、触れる遺跡とそこにくっついてくる言い伝えとしてのストーリー。このゆる~い文化体験の積み重ねが人々の街への深い深い愛情となって記憶の奥底に沈殿していくんだろうなぁ。そして私も再びヨーロッパ文化の虜に。また帰ってきたい。

