フェイントは相手を抜くためじゃない。ゴールまでの選択肢を増やすためだ。
-ジネディーヌ・ジダン
その土地の気候が人や社会に与える影響については、一般的によく言われていることだけど、フランス南部の都市リヨンに来てみて自分でも本当にそう思った。
広く奥深い青空と二つの川に照り返される太陽、そして爽やかな山風。パリとは違ったこの地形の魅力からか、リヨンの街を散策する私の足はとても軽やかで、むしろ踊りだしたくなるくらいだ。どこに行っても、街の様々な寸法や人の賑わい具合が本当に丁度良く、人と街、人と人との距離が不快にならない。また初めて訪れた私にもこの街のアイデンティティーが伝わったのが印象的だ。駅を降りて出てきた広場の目の前には巨大な図書館があって、トラムは個人商店が連なるこじんまりとした石畳のストリートに客足を連れて行ってくれる。大通り以外は車の往来も少なく安全に街歩きができて、ぽつぽつと点在するカフェや小さな公園にも遭遇できる。とにかくすべての空間が絶妙に心地よいのである。パリが大好きで、自分にとってのパリは住んでみたい街のひとつ。でもその感覚とは違い、住みやすい街とはこういうことなのかもしれないとこのリヨンの空気がおしえてくれた。受け入れやすい距離感があって、極度に作りこまれた便利さがないこの街の構成を体験してみて、この肌感覚を大事にしたいと思った。

