私の音楽は自然から多くを学んでいる
— 武満 徹
日本の都会に住む私たちは一体、何から日々の学びを得ているのだろう。平らで真っすぐに伸びる道路、朝も夜も律義に働く信号に支配され、まちの動くオブジェクトとして考えを排除させられ前を行く毎日。むわっと襲い掛かる排気ガスや室外機のエアーに取り囲まれながらも、苦痛などこれっぽちも見せずに今日もきめたスーツ姿をビル窓は映し出す。そんな変わりばえのない都会のフォルム、ファサード、ヴォイドは移り去る日々を無情に跳ね返すだけだ。
東京のそんな無味無情から逃げるようにして辿り着いたアムステルダム。カラッと澄んだ空気が潤う秋の公園で朝の散歩をしてみると、自分の生物っぷりが呼び覚まされる。体に染み入る朝霧が本当に気持ち良い。こういう一時が当たり前にあるこのまちに住む人たちは、なんて幸せなんだろう。

